夜岡

いわゆるリケジョ。社会人2年生

#5 『ラッシュライフ』

伊坂幸太郎/2005/469p

きっかけ

伊坂作品を読むのはゴールデンスランバーグラスホッパーに続いて3作目。小説も好みだし、映画も面白いので二度おいしい。古本屋で100円に値引きされていたものの中から、グラスホッパーのような裏社会を描いていそうな今作を選びました。

あらすじ

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場―。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。

主な登場人物

  • 黒澤 泥棒。仕事には独特の美学を持つ。『重力ピエロ』『フィッシュストーリー』にも登場。
  • 河原崎 高橋の宗教団体の信者。父親を自殺で亡くした。
  • 京子 カウンセラー。青山と不倫関係にある。
  • 豊田 職を失い、家族にも見捨てられた中年男性。

感想

繋がりのない4つの物語が始まり、整理が難しく最初はなかなか読み進められなかった。4人の物語が交錯するあたりからは、最後まで一気に。バラバラ死体や動物が生き返るシーンはフィクション感が強いけど、スケッチブックや犬の変化を辿れば実現可能な物語ってところが面白かった。高橋の予知能力だけは謎だけど。
 
一つの事象を全く同じ視点で見る人なんていなくて、こんなにも事実は人それぞれなんだなと。(恩田陸「三月は深き紅の淵を」の憂理の話を思い出した。)あとは解体のくだりがえぐい。(「グラスホッパー」寺原息子のシーンを思い出した。)登場する女性は、しゃべり方も行動もリアリティーさがないし、以前読んだ2作を思い返しても意地悪く書かれる事が多い気がする。(桃、比与子など。)
 
最初にスケッチブックで交錯した4人の物語が、最後に展望台でまた交わる。戸田は四角関係の外にいるけど、豊田がそれまで巡ってきたサイクルを経て、金と権力の象徴を打ち砕くシーンはスカッとするし、夢がある。
黒澤に惚れちゃうのは宿命だよね。
 

気に入ったセリフ

オムレツを皿に移すような、優しいやり方だった。

 

ラッシュライフ (新潮文庫)

ラッシュライフ (新潮文庫)